筋膜からみたパンプの仕組みと、パンプ予防の考え方

実は以前、Climbing-netさんで何本かコラムを書かせていただいたことがありました。
その中でも特に人気だったのが、パンプ解消法についての記事です。

『パンプの仕組みとは?治療家が教えるパンプ解消の裏技』

ちょうどこれを書いたのが、今から約2年ほど前の話。
その後もパンプの仕組みやパンプ対策について調べたりすることが多々ありました。

どうせならたくさん登りたいだろうし、強くなりたいじゃないですか?
だったら今よりも効率の良いパンプ対策を考えたい。

というわけで、色んな方々を実験台にして(実験にお付き合いいただいた皆さん、ありがとうございました!)色んな方法を模索していたところ、
「あ、もしかしてパンプってこうやったら早く回復できるんじゃない?」

というひらめきと失敗を重ねた結果、ある一つの結論にたどり着いたのです。
と、いうわけで2年の歳月をかけ、満を持して『筋膜からみたパンプの仕組みと、パンプ予防の考え方』というタイトルで、今一度パンプ対策について考えてみたいと思います。

目次【パンプの仕組みとは?治療家が教えるパンプ解消の裏技】

パンプってなんだろう

では、もう一度『パンプ』とは、どんな状態を示すのを説明しておきましょう。
例えばボルダリングジムで登っていると、段々と前腕がパンパンに張ってきてホールドを持ちづらくなってきたことはないでしょうか。

また、リードでも上部まで登っていくと段々と前腕が張ってきて『ヨレ落ち』を経験したことは、誰しもがあるはず。
そういった、
前腕がパンパンに張ってホールドを保持できない状態を『パンプ(パンプアップ)』と呼称しています。

もともとはトレーニング用語からきた言葉なのですが、モトクロスライダーたちからは『腕上がり』と呼ばれたり、海外ではアームパンプと呼ばれていたりするそうです。

『筋膜』からパンプの仕組みについて考え直す

じゃあ、このパンプの仕組みを考えていきましょう。

実はランナーなど脚周りに負担がかかり続けるスポーツでは、このパンプ症状がひどくなるケースも存在しています。
これを『慢性コンパートメント症候群』と呼んでいます。

腕、脚の筋肉たちは、膜状の壁(筋膜)によって区画分けされています。
みかんのを輪切りにして見てみると、ひとつの房ごとに別れているのと同じようなイメージです。
で、この房の中の実が膨張した状態がコンパートメント症候群。

ただし、これがみかんやトマトであれば、房や表面の皮が亀裂が入ったりするだけで済みますが、人の体ではそうはいきません。

ネットで調べると重症例が多いので気分がめげてしまいますが、やはり脚がパンパンに張ってきたり、脈が取れなくなったり、脚が上がらなくなったりという症状がみられます。

なんとなく我々が知っているパンプ症状と似ていませんか?

これを前腕に置き換えてみると、次のような過程が考えられます。

クライミングをして前腕を酷使する→酷使された筋肉が張ってくる→膜の中の筋肉が膨張し、中の圧力が上がる→圧力が上がることによって血管などを圧迫→疲労物質などが流れず、結果として筋肉本来の力を低下させる。

これがパンプの起こる過程だと仮説を立てたのです。

じゃあどうすればパンプを遅らせられるのか?

ここで考えるべきは、アプローチの対象を実(筋肉)ではなく、房(筋膜)にすること。
筋肉の膨張そのものよりも、筋膜を緩めることで中の圧力を下げることで、血管の圧迫を抑えられるのではないかと考えました。

そこで、クライマーを対象に実験を行ってみたので書いておきます。

対  象:一般及びユースのクライマー11名
実施方法:パンプ状態の前腕に筋膜リリースを行い、主観的な変化を観測
結  果:9名がパンプの軽減を実感し、2名がよくわからないと答えました。

まとめ

まだまだ数が少ないのですが、少なくとも対象の約80%が何らかの変化を体感したことは事実です。
だからこそ、日頃から前腕だけでなく肩から腕全体の筋膜を柔らかく保ってあげるのがパンプ予防につながると考えています。

最近パンプしやすくなったとお嘆きのあなた。ぜひお試しください。

ABOUTこの記事をかいた人

●柔道整復師、姿勢改善すこやか整骨院 院長●クリニックや整骨院勤務を経て、延べ1万人以上のアスリート、7万人以上の施術実績を持つ。 2014年4月に奈良県香芝市で開業(現在は御所市に移転)。『レントゲンでは異常なし』と言われるような症状を得意とし、皮ふの調整から体のバランスを整えるプロとして活動している。