「どうしても、野球に復帰したいんです」
高校1年生のYくん(仮名)は、強い口調でこう言いました。
中学2年生の時に、試合中、フルスイングをした時に、腰に嫌な感覚を覚えたYくん。
その後、日ごとに痛みを増していく自分の腰に不安を感じながらも、レギュラーから外されたくないという一心で、休むことなく、練習に参加し続けたそうです。
そして、4ヶ月が経過したある日。
いよいよ、歩くのもままならない状態のYくんを心配した親御さんが、学校を休ませて、大きな病院のスポーツ整形で診察を受けさせました。
そこで受けた診断が、
「腰椎分離症」
お医者さんからは、コルセットの固定を命じられ、Yくん数ヶ月に渡ってのコルセット固定を余儀なくされました。
また、大好きだった野球も、休まざるを得なくなったのです。
その半年後、なんとか復帰を遂げたYくん。
今までの遅れを取り戻すかのごとく、練習に明け暮れました。
そして進学したYくん。
ある日、外野からの遠投をした際に、また腰に嫌な感じを覚えたそうです。
その際、Yくんはこう思ったそうです。
(あぁ、また僕は野球ができなくなるのか)
そして、また病院に行ってみると、「分離症だからコルセットで固定しましょう」と言われました。
さらに主治医の先生は、Yくんにこう言ったそうです。
「Yくん、プロの選手でも、分離症で頑張っている選手はたくさんいるんだよ。
だからコルセットで固定せずに、腰への負担を軽減することも、選択肢に入れたらいいから。」
そして、Yくん親子は、当院を見つけてきてくれたのです。
そもそも、分離症ってなんなのでしょうか?
また、どのような人に起こりやすいのでしょうか?
分離症とは、簡単にいうと背骨の疲労骨折です。
反復したストレスが背骨の一箇所にかかり続けることで、背骨の一番弱い部分である後ろ部分に亀裂が入って起こります。
これだけ聞くと、とても怖く聞こえますが、背骨は全周囲を強固な靭帯で保護されているので、立てなくなったりということはまずありません。
ただ、一箇所にストレスがかかるということですから、ストレス軽減のために周辺の筋肉の緊張感が増し、痛みを起こすケースが多く、さらに悪化すると痺れを併発するケースも存在します。
じゃあ、どんな人に、この分離症は起こりやすいのでしょうか。
まず、股関節が硬い人。
股関節は骨盤の動きとリンクしています。
股関節が固い状態でしゃがみこむと、骨盤が後ろに倒れます。
また、体を回旋(捻る)ようなスポーツの場合、通常、股関節が動き、骨盤を回すのですが、股関節が硬いと骨盤がうまく回らず、腰で捻るようになってしまいます。
そうすると、腰へのストレスが増し、結果として分離症に移行するケースが出るわけです。
また、猫背の人も、分離症になりやすい傾向があります。
猫背のように背中を丸めている場合、回旋動作をすると胸部が回りません。
結果的に、胸部の動きを腰で作るようになるので、腰への負担が増してしまうわけです。
ということは、腰への負担を減らしてあげるだけでも、分離症の症状は軽減、もしくは消失する可能性があるということ。
今回のYくんの場合であれば、皮膚調整(筋膜リリース)を行い、姿勢を調整。
その後、動きづらかった股関節と胸部の動きを付け直しました。
結果としては、2週間で歩行時の痛みが軽減し、1ヶ月後には復帰を果たすことができたのです。
今は、当院を卒業して、大好きな野球を楽しんでいます。
コルセット固定で、状態が良くなる方もおられます。
でも、コルセット固定をしなくて済むのであれば、それに越したことはない。
僕はそう考えます。
姿勢を直して、楽しい野球ライフを送りましょう!
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●柔道整復師、姿勢改善すこやか整骨院 院長●クリニックや整骨院勤務を経て、延べ1万人以上のアスリート、7万人以上の施術実績を持つ。
2014年4月に奈良県香芝市で開業(現在は御所市に移転)。『レントゲンでは異常なし』と言われるような症状を得意とし、皮ふの調整から体のバランスを整えるプロとして活動している。